「ハンセン × つたえる どっとこむ」について

 

2021年初夏、東京都・東村山市を拠点とする一般社団法人「知る学ぶ伝えるハンセン病問題の会」が設立されました。たまたま一般社団法人という形をとってはいますが、活動に関わっているのは、地元・東村山に暮らす市民、東村山市・青葉町にある国立療養所「多磨全生園」に縁あって集まるようになった、普通の人たちです。団体名が長かったので、公式ホームページは覚えやすい「ハンセン × つたえる どっとこむ(はんせん・つたえる・どっとこむ)」にしました。

ハンセン病問題について、よく知らないという人も多いと思います。ハンセン病に対する偏見・差別は長い歴史をもっていますが、日本国内であらたに発症する人は、ほぼいないといっていい状態です。国立療養所で暮らす「元患者(完治するにも関わらず、なぜか元患者と呼ばれたりします)」の高齢化も進み、このままいけば遠くない将来、日本からハンセン病にかかったことのある人は、ひとりもいなくなることでしょう。

でも──だからといって──このまま「なかったこと」にしてよいのでしょうか。療養所に暮らす方々は、国の誤った政策によって家族、故郷から引き剥がされ、強制隔離されました。幼い頃に収容された人のなかには、療養所で70年以上暮らしているという方もいます。失われてしまった時間は、どんなことをしても還ってくることはありません。

この世の中には「なかったことにしてはいけないこと」が、あると思います。原爆の被害に遭った広島、長崎。県民の4人に1人が亡くなった沖縄戦。水俣病をはじめとする公害病被害。原発事故により、故郷から離れることを余儀なくされた人たちの苦悩と苦労。

その多くが風化しつつあり、いつの間にか「なかったこと」にされようとしています。私たちが日頃目にしているハンセン病問題とまったく同じことが、じつはさまざまな場所で起きているのです。

「ハンセン × つたえる どっとこむ」は、ハンセン病問題をひとつの入口として、さまざまな個人、団体がつながるきっかけになれたらと考えています。どこかで苦しんだり、悲しんだりしている人たちがいるとしたら、それは決して他人ごとではありません。理不尽きわまりない不幸は、いつか思いもよらないようなものに姿を変えて、あなたに降りかかってくるかもしれないのです。

そんなときも仲間がいればなんとかやっていける。溜まり場で馬鹿話をしているうちに、明日への希望がわいてくることだってある。あまり肩肘張らず、そんな感じでやっていきたいと思っています。今後ともよろしくお願いします。